(5)天動説を基準とするニセ科学批判

ニセ医学を駆逐できない理由

 ニセ医学は、形式的には、科学的に論証しているように見せかけているだけで、論理的には明らかな虚偽が含まれている。治療費や治療薬・治療機器の販売、あるいは自己の理論の優位性を誇示することなどが目的であるから、それが達成されるなら理論の真偽などどうでもよいのである。

 ホメオパシーのようなニセ医学は、医学論争の場において取り上げるほどの重要な問題ではなく、理論の真偽を問わないニセ医学が、医学の主導権を握る可能性はないだろう。1つ1つ論破したところで、科学的に意味のあることではなく、医学の進歩につながることでもないので、これ以上は論じない。

 放置しておくわけにはいかないのは、天動説のように理論的に間違った科学が、主導権を握っている場合である。天動説は間違っていたが、日常生活レベルにおいては大きな不都合もなく、人々の日常的感覚に近かったので、間違いがバレることはなかった。多少の変則事例や不都合ならば、それを解明しようとはせず、周転円などの弥縫策で済ませていたのである。

 天動説が間違いであることは、今では小学生でも知っていることである。しかし、地動説が科学として確立する以前は、諸科学の基準は天動説にある、といえるような状況であった。天動説の破綻により呪縛から解放され、近代科学の確立が可能になったのである。したがって、現代において、諸科学の基準が天動説であり、そこからニセ科学を批判するといったような事態は起きていない。常識的に天動説を基準とするニセ科学批判などは成立しない。

 

ニセ医学批判批判

 ただし、1つだけ例外がある、それは医学という分野である。科学的に正しい医学に基づいてニセ医学批判が行われるのであれば、遅かれ早かれ大部分のニセ医学は駆逐されることになるだろう。しかし、ニセ医学批判というジャンルでは、天動説のように科学的に正しいとは言えない現代医学を基準として、ニセ医学が批判が行われている。これでは駆逐することは難しい、それが現状なのである。

 地動説では宇宙の中心を地球から太陽に転換した、それにより思弁的な説明を捨て、物理法則によって説明することが可能になった。それが物理学を発展させることになり、さらに諸科学を大きく発展させることにつながった。これまで論じてきたように「量子磁気医学」では、タンパク質分子において、視点を官能基から骨格構造に転換した。それによって、病気という現象の本質は化学変化ではなく物理変化ということになった。病気を物理法則によって解明できるようになり、生体に物理的作用を加えるだけで、多くの病気を確実、即効的に完治させることが可能になった。タンパク質分子における官能基から骨格構造への転換は、地動説における地球から太陽への転換と同じような意味を持つことだろう。

 ニセ医学批判を行っている医師や一部の科学マニアたちは、現代医学が天動説のように間違った科学であることを理解できない。分子生物学に基づいて、タンパク質分子の官能基における化学反応の集積によって、生命現象が進行すると考えている。標準治療といわれる薬物治療が最善の治療であるから、それを選択することが正しいとされている。それが医学の変革を妨害していることが分からない、分かりたくもないのだろう。

 エビデンス論であるが、統計学や無作為化比較対照試験などは、事実や科学の法則とは何ら関係性はない検証法であり、科学的根拠とはなり得ない。それにもかかわらず、それを導入することによって、現代医学の治療理論が科学的に正しいかのように思わせる効果はある。現代医学パラダイムに反するような主張は有り得ないことであり、すべてニセ医学として批判することが許されると思っているのだろう。そこには「量子磁気医学」も含まれる。

 たかが磁気を加えるだけで、多くの病気が即効的に完治することなど考えられない。専門家である医師たちでさえ理解できないのに、ましてや患者たちにとっては、理解しがたくニセ科学そのものであろう。即効的に完治することや、万病に効くというのはニセ医学の特徴である。「量子磁気医学」もニセ科学であるから、理論の真偽を検討することも、実際に治療を行ってみることも、その必要はないということになる。

 

専門家の権威
 遺伝情報に基づいて合成された直後のタンパク質分子は、アミノ酸が鎖状に結合した状態になっている。骨格構造内部の単結合部分が、ねじれ回転することによって熱力学的に安定な球状構造になる。それを折り畳み、あるいはフォールディングといい、1秒も要することなく瞬間的に完了する。それにより官能基の化学反応は正常に進行することができる。その構造を逸脱すると病気ということになり、元の構造に戻すことが治療ということになる。それは「構造相転移」という物理変化であり、フォールディングが1秒も要しなかったように、瞬間的に終了してしまう。この物理的性質はタンパク質分子の種類にかかわらず共通である。したがって、病気の違いにかかわらず即効的治癒が可能であることに何ら不思議はない。

 生物物理学に基づく、この様な説明など、無知で論理的に考えることを嫌う患者たちという大衆にとっては、馬の耳に念仏となる。医師という専門家を信頼していれば済むのであり、訳の分からない理論など知る必要はない。尚も医師の指導に従って、現代医学による対症療法を受け続けることになる。

 天動説から地動説へのパラダイム転換において、地動説支持者たちに権威などなく、権威は天動説を信奉する教会側にあった。このように、権威と科学の真偽は一致しない、パラダイム転換においては、専門家の知識など素人同然なのである。

 天動説から地動説へのパラダイム転換を理解できず、地動説を批判し続けた天動説信奉者たちと同じ間違いをしているのがニセ医学批判論者たちである。現代医学には解決できない問題があるが、それは 現代医学パラダイムが天動説のように間違っているためである。間違っていることを指摘されても、それを理解できず、なおもニセ医学批判を続けている。

 つまり、ニセ医学批判がニセ医学化しているのである。だから、現代医学に取って代わるべき「量子磁気医学」までも、ニセ医学として批判されてしまう。医学の進歩を妨害し、多くの患者たちの命と健康をそこねる結果となっている。だから、ニセ医学批判論者たちの言動を絶対に許すことはできない。ニセ医学批判は、ニセ医学による損害をはるかに上回る有害な運動であることを知るべきである。

                                 (6)に続く

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